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楽美術館 楽歴代展 [散 歩]

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ここ数年、京都を訪れるのはいつも年末で、その時期の美術館はたいてい休館中である。
毎年「京都へ行く」ということだけははっきりしているので、あらかじめ申し込みをしておいて、妙喜庵待庵や苔寺を見に行ったこともあった。
夏の暑さを避けるために入った東寺の立体曼荼羅に圧倒されて唸ったこともあったし、旧い友人と再会し、お茶を飲んだ万昌堂の、隠れ部屋のようなぬくもりにふと気が遠のくように感じたこともあった。
京都はいつも何かしら私に大きなものをもたらしてくれる。
あるいは私たちの中にある何かを、呼び覚ましてくれるのかもしれない。
いずれにしても私の中で、京都という土地は別格だ。

ところで今回はなんとしても、楽美術館を見に行きたかった。
やきものが好きで以前より訪れたいと思ってきたのだが、場所が少し中心部から離れていることもあり、普段の旅程にはなかなか組み込めないでいたからである。
現在「楽歴代展」を開催中。

堀川通りをバスで下り、堀川中立売で下車。
春うららかな陽射しのなかをのんびりと歩いてゆくと、落ち着いた住宅街のなかに楽美術館はある。
景観保全のためか、おしゃれな設計なのか、建物は二階建てだがあまり高さは感じられない。
靴を脱いで館内に入る。
受付の男性が紳士然としたステキな方で、
「ここらへんで昼食を取りたいのですが、どこかお薦めはありますか」
などといきなり訪ねた私に、親切にも2件ほどお店の名を挙げてくださる。
それだけでももう感激してしまうわたくし。
そんなわけで、早くも半分高揚している状態で展示室へ。
照明をかなり落とした薄暗い室内に、楽家初代・長次郎の作品から当代(十五代)吉左衛門の作品まで一挙に並べてある。
・・・・・なんという贅沢!!
そして、なんという恐ろしさ!!

いかに千家のための家だとて、お茶碗をつくる陶工たちは気楽にのんびりかまえているわけではない。
注文があったらその注文に沿って器をつくっていればよい、という世界では決してないのだ。
代々当主が変わるたび、そこには
「いかに先代を超えるか」
あるいは、
「いかに先代までとは違う方向性を打ち出せるか」
という、はげしい美(技術も?)との闘いがあるのである。
以前、NHKで「千家十職」を特集したとき、それぞれの家の若い世代が苦しみつつ悩みつつ、その家に生きるさまを、ただただひたすら「大変なことだなあ」と思いながら見た記憶がある。
その、苦悩の歴史と言っても過言ではない、代々のお茶碗が、それぞれにうつくしいたたずまいのなかに、ズラリと並べて展示されているのである。
「全部見られる!」という嬉しさと同時に、私は空恐ろしいものを感じましたよ。

とは言え、それぞれの個性の違いを比べ見る楽しさというのは、鑑賞者の気楽な喜びであります。
ひええええっ、と思ったのは事実ですが、私はずいぶん心から楽しませてもらいました。ははは。

そしてやはり長次郎は完成された美だなあ、と感じるのです。
手に収まるほどの小ぶりなお茶碗、厚みも色合いも地味で、けれどそれを使う人が気持ちのよいように、つくられている。丁寧に丁寧に手を加え、つくり上げた、そういうお茶碗であります。
三代道入(ノンコウ)にすこし破格なところのあるのは、光悦との交流があったからなのだと知る。
へえ・・・・と感心するが、何事につけてもスケールの大きなひとであったのだろう。あでやかに、しかし軽みのある作風が特徴らしい。
五代宋入は婿養子に入ったひとで、幼少期から楽家で修行を積んだわけではない。けれども、尾形乾山ら兄弟といとこの関係にあり、彼らからの影響も強かったとのこと。展示されているお茶碗にはさびた風合いの黒釉がかけられており、なんとも深い味わい。

八代得入は若くして亡くなった人ではあるが、誠実な器づくりをしたのであろう。
私はずいぶんこの方のお茶碗に惹かれてしまって、はがきを一枚買ってきた。
上品でひかえめなたたずまいの赤楽である。小さめの造りで径も狭いが、形よく優雅に立ち上ってくるフォルム。口辺のやさしく整えられた甘い曲線には、人をひきつける色気がある。
このひとは夭折したために独特の作風を築くところまで行かなかった、という説明がキャプションにあったが、私はしかし、丁寧な誠実さが好きである。

目玉と言うか、やはりたいへんに興奮してしまったのは光悦の「立峯」なのだけれども、楽家代々の個性豊かなお茶碗が一堂に会してズラリと並んでいる様は圧巻です。
訪れる人もお茶関係の方が多いようで、時おり展示ケースの前に立ち止まっては、お茶碗を手のひらにいただく格好をしたりする。
イメージを膨らませながら、「ああ、こんなお茶碗でお茶をいただきたいなあ」なんで思ったりしているのかもしれない。

ちなみに受付の方に教えていただいたごはん屋さんはお味もよく、ゆったりと時を過ごせたのもさることながら、とても親切な接客でありがたかったです。

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