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千葉市美術館「田中一村 新たなる全貌」展 [散 歩]

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9月12日の日曜美術館で田中一村について放送する、ということだったので
「それより前に(展覧会に)行かなければ!!」
とずいぶんあわてた。
しかし仕事の関係もあって、結局千葉市美術館へ行けたのは12日の当日。
午前中のことではあったものの、すでに美術館は混んでいた。
たとえば国立博物館の長谷川等伯展の時のように、「60分待ち」という混雑では全然なかったけれど、有名な絵の前には少し人だかりがある、という程度。この美術館はミュージアムショップもそれほど広くないので、私が14時やや前にお店へ入った頃には、レジ待ちの列が長く店外へ伸びていて驚きました。
そのくらい。

田中一村という人はお父さんが彫刻家だったこともあって、おそらく幼少期より絵画の手ほどきなども受けたのであろう、十代に入る前からすでに「神童」の名を欲しいままにしていた巧者であった。展覧会ではその頃の絵から奄美へ移り住んだ後のものまで約250点の作品が展示されている。
とにかく8歳とか9歳の子どもが筆を自在に操ってビシっと構図の整ったカッコいい絵を描いているのだから、「うわ~」と感嘆してしまうのも道理というものだ。私は一人で展覧会へ行ったので、周囲の来場者の反応もそのいちいちを観察できた。みな一様に感心し、小学生時代の絵を誉めそやす。さもありなん。
一村の絵は、中学校くらいまではずっと南画である。
ただ、私自身はこの初期の頃の絵の過剰さが苦手かも知れない。
力強く猛々しい筆遣いと、余白を許さず、空間を埋め尽くすような作品群に、ただただ圧倒されてしまうばかり。
まだ若い一村が持てる技術をすべてぶつけて描いただろう絵に、なんだか息苦しささえ感じてしまう。
とにかくすばらしく上手い。模写というか、臨書も上手い。恐ろしいくらいである。

それが、東京美術学校を中退した後少し経つと鳥が絵の中に出てくるようになる。
大きく紙面全体に描かれた葉群のなかに、鳥がいる。
トラツグミ一羽だったり尾長が数羽だったりするのだが、これはとても好きになった。
筆遣いの勢いというか激しさが身を潜め、絵の中に穏やかさが漂う。
色の使い方が鮮やかなものも。
「秋色」という作品(群)が3枚展示されていた。
「作品群」と書いたが、必ずしも3枚同じ時期に描かれたわけでもないらしい。
しかしこれらの絵は、私はとても好きだ。
河合玉堂の絵とか、琳派的な感じがある。

奄美時代の絵についてはすでにいろいろなところで取りげられているので、今さら私が言うべきこともない。
ただ、実は田中一村のことを全然知らないでこの方の奄美の絵を初めて見たとき、私は「アンリ・ルソーみたいだなあ」と思ったのだった。
「日本のゴーギャン」というのも広く言われている呼称のようだ。
一村自身にとっては不本意なものであろう、と思う。
確かにテーマとしては、ゴーギャンがタヒチの光の中に「生と死」(と言っていいのか)を描いたのと同様、“最後期の作品には一枚の絵の中に生と死が濃密な気配を持って描きこまれている”(「奄美の杜【クワズイモとソテツ】」についての日曜美術館の解説)という。
うーむ…「生と死」か。。。
確かにそうなんだろうけれど。
そのように表現してしまうと、なにか陳腐な感じがしてしまうのは私だけか。


奄美へ行く前に、一村は九州旅行して歩いている。
私が最も驚かされたのは、この頃氏が撮った写真のうつくしさである。
波、岩、海。
どれを取っても対象物の一瞬を切り取って、何か細やかに蓄積されてゆく、あるいはそれに対して震えのくるような、わずかな感情の機微を感じさせないではいられない写真作品なのである。
一村はそれらの写真を元に絵を描いたが、私は写真そのものがすでにもう、一つの作品として完成されたもののように感じた。
そして写真の方が、それをもとにして描いた絵画作品よりも雄弁にさまざまなことを語る、とも。
その瞬間を切り取らないではいられなかった撮影者について。

写真が切り取る一瞬。その、静止した一瞬の中にある力強い動。
もし一村がそうした一瞬一瞬を、絵画の中に蓄積させようとして「奄美の杜」を描いたのであれば、私は納得が行くようにも思う。
「奄美の杜【クワズイモとソテツ】」は、写真ではおそらく表現できまい。

一村という人は、たいへん巧みな技術を持っていたのにも関わらず、最後まで中央画壇に登場することなく、その生涯を終えた。
天才的な技術が返って、この人を縛りつけてしまった、そういう側面があるのかもしれない。
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