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三島由紀夫の家 [本]

三島由紀夫の家 普及版

三島由紀夫の家 普及版

  • 作者: 篠山 紀信 篠田 達美
  • 出版社/メーカー: 美術出版社
  • 発売日: 2000/11/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


三島由紀夫という作家についての私のイメージは、饒舌な人、自己陶酔の人、自意識のあふれ出ている人、というような過剰さに集約され、それがいつも私を「お腹いっぱい」にしてしまう。だから『仮面の告白』も『金閣寺』も、今まで挑戦してきたほとんどの作品を、私は途中までしか読めなかった。好きな歌舞伎でも、三島脚本の『椿説弓張月』では、白縫姫の残酷シーン(お琴を弾くお姫様の前で裏切り者が折檻されるシーン、杭を肉体に打ち込み、血がだらだら流れる)が、これまた仰々しく、長々しく、かつまた生々しく、「三島はここを見せ場と考えていたんだろうなあ・・・」と思うともう、なんだかどっと疲れてしまう。
作家というのはある種の過剰さを持つひとなのであろうし、もっと言えば芸術家とは一般的に考えられる範疇には決して収まらない人々なのだろうから、誰もが同じような要素を持つはずなのに、やはり私は三島由紀夫が苦手なのである。

この写真集は、篠山紀信さんが撮った1000枚以上の三島邸の写真から編んだもので、今は普及版として小さなものが出回っている。
写真の美しさもさることながら、細部までこだわった三島の美意識が、家のいたるところに垣間見られ、つくづく感心してしまう。
例えば盛装した人々が庭でお茶を飲んでいる写真。
庭に面して連なるガラスの扉を背に三島はバルコニーに席を取り、庭でゆったりとくつろぐ来賓たちの中、あたかも王様のような雰囲気をかもし出している。
玄関、、応接室、居間、3階から見る景色。
どれをとっても大変ぜいたくで、ひとつひとつの家具・小物がこだわり抜かれて配置されている。玄関の照明器具は、そういえば庭園美術館の朝香宮邸でよく似たものを見たように思うし、自ら特注で作らせた応接室のテーブルなどは、(「Y・M」のイニシャルがなければ)洗練された上品な造詣である。
西洋風の趣味のよい古い調度。
贅沢な空間。
こんなところで営まれる「生活」が、ほんとうにあったのだ、と思うと、そら恐ろしくさえ感じる。

ただ、芸術的な家である一方で、それが三島という人の個性なのか、ところどころに「えっ!」とびっくりさせるそぐわなさとか、ぎょっとさせられるほどの家主の自信などが垣間見られるのも事実。それはなんとも言えないユーモラスさにも通じます。
例えば、庭のアポロン像。私はやや引きました。
大江の『性的人間』に出てくる海辺の家の庭に立つアポロン像を思い起こしたりして。三島自身がそのアポロン像の下に立つ写真を篠山さんは撮っていて、
「それって、自分はアポロンだぜっていうことなんだろうな・・・」
とやっぱり思ってしまいます。
そのアポロン像の足元に施されているきれいなモザイクタイルは長さ15cmの大理石だそうで、つまりは15cmの長さで地中に埋まっているというぜいたくさ。
こだわりがあるのだなあ。。。。

そしてまた、立派な書斎、自著の並ぶ書棚、重厚な雰囲気。
しかしその中に配置されているのは、当時の最新の家具であっただろう、スチール机。
今見ると本当になんというか「えっ!!ここでスチール!?」とびっくりしてしまいます。
(ちょっと前に見た『砂の器』で刑事さんたちが喧々諤々していたとき、その傍らにはべっていた、くたびれた机・・・あれと同じだよ…)
さらにその素敵な書斎はじつは全面鏡張りなのだとか。
あ、やっぱり…なるほど・・・
というような感じで、それはそれは美しい家を、家主の三島というその人の個性とともに、とても興味深く見ることのできた写真集でした。

私の中で、三島という作家に対する見方が、すこしだけ変わったようにも思います。

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